玉泉園は鑑賞することに重きを置いた庭園であり、座敷に座って全景を眺めた時、最も美しく見えるように池や石、滝などが配されています。
しかし、池泉回遊式庭園という作庭様式のとおり、密生する青苔や配石の妙、老樹巨木が醸す幽玄美など
細部に宿る美しさの神髄は庭に足を踏み入れてこそ実感できます。池を中心に回遊し、視点を変えながら景観をご鑑賞ください。
園内には樹齢400年超といわれる朝鮮五葉松(チョウセンゴヨウマツ)や凌霄花(ノウゼンカズラ)、楓(カエデ)、檜葉(ヒバ)などの老樹が見られます。
秋には白樫(シラカシ)、伽羅木(キャラボク)、藪柑子(ヤブコウジ)がかわいらしい実をつけ、錦木(ニシキギ)、満天星躑躅(ドウダンツツジ)が紅葉し、金木犀(キンモクセイ)が芳香を放ちます。
寒さが一層増す頃には柊(ヒイラギ)や山茶花(サザンカ)が花を咲かせ、雪化粧した庭に彩りを添えます。
玉泉園には本庭、西庭、東庭の3庭があります。兼六園の樹木を借景とし、崖地という特殊な地形を巧みに利用した庭で、平地にある池泉や地割、崖地の滝組や石組に江戸時代初期から中期の作庭様式と手法が見られます。
例えば、本庭にある池が「水」の字型に設計されている点は江戸中期の地割の特徴です。
池泉に向かって右手が出島となり、
その前方にもうひとつ出島が地割され、中島が形式的に縮小されていることから、観賞本位の作庭であることもわかります。
また、崖地には東西2組の滝口を設け、本庭の前から眺めるとそのすべてを視界におさめることができます。東滝においてはその構成や石組に江戸初期の造園の手法が見られます。
園の中心となる庭。
正面から眺めると、水の字を模った池泉と崖地に設けられた東西2組の滝を視界におさめることができ、起伏に富んだ景観は一幅の絵のようです。
崖地の最上段には茶室の灑雪亭があります。
隠れキリシタンであった加賀藩士脇田直賢が、青戸室石を用いて藩の石工に造らせた隠れ切支丹灯籠。
全体を十字架に見立てており、竿と呼ばれる灯籠の足で竿の下部に合掌をした聖母マリアの像が刻まれています。
本庭の最上段に、見事な樹勢の朝鮮五葉松がそびえています。松の幹には、加賀藩初代藩主前田利家の正室お松の方にいただいた種を植えて実生した凌霄花が絡み、兼六園の眺望台からもその開花を眺められます。
裏千家始祖千仙叟宗室の指導で造られた茶室。
露地から向かって右側に貴人口、左側ににじり口があり、
1畳に台目2畳という間取りで、床柱には赤松を使うなど、
侘茶を表した質素な造りが特徴です。
本庭にある上段の池から下段の池まで、3段に分かれて流れ落ちる滝。
上段の池の水源を兼六園の曲水(きょくすい)から引いていることから、脇田家に対する加賀藩主の信頼の厚さがわかります。
園内にある上下2箇所の池に約50株の水芭蕉が自生しています。
通常、水芭蕉は標高の高い湿原で多く見られ、標高の低い市街地に自生することは稀。春になると白い花苞が開き、訪れる人を魅了します。
織部型隠れ切支丹灯籠
筒胴(ずんどう)型飾り手水鉢
東滝
朝鮮五葉松と凌霄花(ノウゼンカズラ)
越前国松平家伝来手水鉢
灑雪亭茶室
寒雲亭(写)
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